トランプにノーベル平和賞?

 最近トランプ大統領に対する真面目な論評を目にすることがなくなった。「何を言いだすか、何をしでかすか分からない」人物の言動をまともに取り合っていては、こちらが恥をかくことになりかねないからだ。みんなが一歩も二歩も引いて眺めるようになっている。ねじれ議会で思うようにやれなくなった自分自身の危機を、国家の危機、非常事態にすり替えて、しかもそれに疑問すら持たない人物が大統領というのだからアメリカ国民もまことに危うい。「小学校5,6年生程度」の知識しかないと職を解かれた誰かが言っていたが、真実に違いない。しかし、他人事ではない。程度の低いトップは我が国にもいる。今日のテーマではないが、「自衛隊明記」で目くらまし、改正憲法に「非常事態宣言」ならぬ「緊急事態条項」を盛り込もうと画策している人物が。
 そんなトランプなのだが、そのトランプを我が国総理安倍晋三ノーベル平和賞に推薦したという衝撃のニュースが飛び込んできた。私は朝のNHKニュースで知った。トランプが得意げに安倍からの手紙を手にしてTVに映っている。「まさか」と思いつつも、あのトランプの笑顔、NHKの報道だ、何かの勘違いということではないのだろう。しかし、ネットでも大騒ぎになっている筈と思いきや、何回開いても出てこない。どうしたことか、1日落ち着かない気分で過ごした。
 今朝になって、朝日新聞に、政府関係者の話として「非公式な要請に応じて推薦した」という記事が載っている。ようやく事態が飲み込めた。まさか!ノーベル平和賞推薦の事実をトランプが公表してしまうとは!!ノーベル賞委員会への推薦はそれ自体が秘匿事項という話もある。無知無配慮、お調子者のトランプならではの行動だ。これは、安倍、政府にとっても、想定外びっくり仰天の一大事であったに違いない。表に出ないと思えばこそのご機嫌取りだった可能性もないではないからだ。
 どう対処したらいいものか、思案投げ首。あのトランプをノーベル平和賞に推薦? 誰が考えても、知られれば世界に恥をさらすことになる話だ。さりとて、フェイクニュースと否定すれば、トランプを嘘つき呼ばわりすることになる。「推薦などしていません」もトランプに失礼だ。トランプに「実は勘違いで、こういう話だったことにしてくれ」と指示、相談もできない。ここは自分の部下とは訳が違う。さあ困った。事実である以上、ここで無理に否定したところでいずれ露見する。
 これが、そのニュースバリューに比して余りに不自然な「間」を生んだのだ。そして、結果、ひねくり考え出されたことが、政府関係者の話「トランプ側から非公式な要請があり、これに応じただけ」なのだろう。「非公式」なら「誰からのどんな話」だったかを説明する必要がないし、「要請に応じただけ」なら自分で真剣に考えて積極的に行動したことではなく、「外交上のお付き合い程度の話」で逃げ切れる。これでいこう。そう考えると、表向きもの静かだったこの間の時間の流れにも納得がいく。いかにも我らが総理安倍晋三の考えそうなことではないか。しかし、国民は、ここ2年間の安倍政権の振る舞いを知り尽くしている。この「しばらくの間」が示すことが何なのかを良く知っている。鳩首協議、緊迫の密談。この政府関係者の話はウソである。真実ならトランプが話した直後に官房長官が対応できている。
 それにしても何という非常識不見識な我が国総理か!!ご機嫌取りにしても、軽々しさの度が過ぎる。世界が呆れて相手にしないトランプである。それに忠犬のようにすり寄る安倍への批判はこれまでに幾度となくしてきたが、お調子者同士の「よいしょ」も事ここに極まれりである。核軍縮条約を一方的に破棄し、全ての政治経済分野において「自国第一、自分の国さえよければよい」、国際協調などくそくらえ、そんなアメリカ大統領を、こともあろうに「ノーベル平和賞」に推薦するとは! 日本にとっても、日本を射程に入れた北朝鮮の核ミサイルは全部そのままスタンバイしてあるというのに!
 「日米核密約を隠し通した佐藤栄作ノーベル平和賞を受賞した。トランプの後ろ盾があれば自分もひょっとして・・・」、そんなことを考えても不思議のない人物だ。一刻も早く辞めてほしい、終わってほしいと願い続けているが、それまでの間も、少なくとも、自分の言動が、自分だけでなく日本国民の恥にもなるということくらいは弁えて行動してもらいたいものだ。