官民ファンドJICと経産省のドタバタ劇 安倍政権の終わりの始まり

こんなことがここしばらくの間あっただろうか。安倍も当然承知のJIC役員に対する高額報酬の約束がひっくり返された。後始末もかつてなく早い。大臣、事務次官の給与カットもうす気味が悪いほど迅速だ。日銀に年間6兆円もの札を刷らせて株を買わせ、景気をよく見せるための株価のつり上げを指示する安倍が、この役員の高額報酬に反対なわけがない。「政府の金も投入するからどんどん投資して稼げ、それで景気が良くなるなら、それ相当の報酬は当たり前だ」、これが彼のごく普通の発想だろう。国民の税金を使って企業に投資し、それで金を儲けたら、儲けの2割は成功報酬として役員に分配する約束も含まれていた。国民の目からはビックリ仰天の話だ。国民の税金をほしいままに使って、儲かればその分け前にあずかり、損が出ても「失敗だったか」で責任はとらなくていいのだから、これほどおいしい話はない。「そんなバカな」の国民目線が安倍にはない。また、JICの社長も「一旦約束したことは守れ」と怒っているというのだから呆れてしまう。わが国の上層部、金持ち連中の頭の中は一体どうなってしまっているのか。金と欲だけに支配されているとしか思えない。
 この約束が事前にマスコミにもれてしまったことが今回のドタバタ劇の始まりのようだが、それがなければ約束のままに決められていたことだった。そして、後から判明したところで、安倍は例の調子で、「私は知らなかった」? 或いは、「それ相当の報酬で当然」と国会で屁理屈を並べて頑張り通したことだろう。
 漏れたところで今まで通り居直ればいいものを。そのいつものやり方を今回できなかったことが私の注目点である。この事実が知られて異論が噴出した、と記事にはある。お上が決めたことに、自民党議員の中に異議を述べる者が多くいたと理解していいのだろう。少し前までに比べれば、これ自体が自民党内の大きな変化だ。さらにまた、ここに、その意見を政府が聞かざるを得なかった、受け入れざるを得なかった、という事実が加わるのである。これは一強安倍にとっては一大事である。意味不明の日本語を自在に操りどのようにでも話を捻じ曲げて逃げきる、それで安泰だった安倍政権。それが後ずさりして撤回するとは! 久しく見ることのなかった景色ではないか。
 外国人労働者受け入れ問題を見ても、追い詰められればなおさらに強引な手法に走る、「そこのけ。そこのけ」式で傍若無人の国会運営を常態化させている安倍にしては?の珍しい行動だ。 カルロス・ゴーンの日産高額報酬隠蔽問題の真っただ中、庶民の預貯金の金利ゼロ、日銀の株主への大盤振る舞いは平気、格差拡大を意に介さない安倍も、さすがに自分の足元の高額報酬容認では、国民に対して「説明がつかない」、国民の神経を逆なでしかねない「まずい問題」と踏んだのだろうか。この反省なしの素早い変わり身も彼の得意技の一つではあるのだが、先のブログで、総裁選、沖縄知事選以降の安倍政権弱体化の期待を述べた私としては、その兆候の一つとして大いに歓迎すべき出来事には違いない。
 今日の新聞には、「参院憲法審 審議見送り」「自民 国民投票法改正も先送り」の記事もある。これも、「国民に嘘も平気な安倍政権に憲法をいじらせるわけにはいかない」、この間の政治の流れからは、全く当たり前の事なのだが、当たり前のことが当たり前にいかなかったのがこれまでの安倍政治だった。自民党国会議員の中にも、このままではいけない、このまま安倍についていったらわが身が危ない、国家国民のことというより、或いはその程度の理由なのかもしれないが、それでも、今までとは違う何かを考え始めている人たちが出てきていることは間違いなさそうだ。
 来年の参議院選挙がくれば、国民は安倍政権に対する正しい答えを間違いなく示すだろう。そのことを肌で感じている安倍は、この先、唯一自分が政権の座に生き残れる可能性のある、衆議院の解散、衆参同日選挙の実現に向けて、その口実作りに血道をあげることになる。消費税増税延期、北方領土問題の方針転換・・・・彼にとっては最後のあがきであり、その口実は何でもありということになるのかも知れない。
 こうした私利私略、解散のための解散は何としても阻止しなければならないが、「衆院解散」は総理の専権事項、残念ながら、野党にも国民にもこれをやめさせる直接の手段はない。これまで通り、安倍は聴く耳持たずに突っ走るからだ。できるとしたら、それは自民党の国会議員であり、また、あの総裁選でその良識を見せてくれた自民党党員の人達である。さすがの安倍も、その声を無視してまで解散強行はできないであろうから。
 自民党にもあったはずの、国民全体と正直に向き合う真面目さ、誠実さ、国家国民のためにあるべき政治の探求、そして、政治家というより人間としての良心と良識。微かに見え始めたその再生と復活の兆しに期待したい。何はともあれ、まずは安倍政治、これだけは終わりにするために。