安倍内閣支持率のこの高さ! 国民はどうなってしまったのか?


 「この国民にしてこの総理あり」決して口にしたくなかった言葉だ。

 私はかつて「国民がこれほど酷い安倍政治をいつまでも許すはずがない」「国民を信じたい」「国民に対する信頼を失ったら、政治を語る資格を失う」「政治は国民の暮らしのためにあるのだから」とブログに書いた。しかし、この内閣支持率を見て今その信頼を失いかけている。もちろん、国民の全てではない。ここまでその低劣さ酷さを見せつけられてなお「安倍で良い」とする安倍内閣支持者に対してである。森友加計とうち続くデタラメ政治にとどめを刺したかにも見える「桜を見る会」を目の当たりにしながら、なお半数近い国民が安倍内閣を支持するという。私には思いもよらぬ数字がここにある。

 一体どう考えたらいいのか。しばし整理に戸惑う。私は前に、安倍首相の嘘と隠蔽、ごまかしと逃げの政治の常態化で、国民の倫理道徳感まで麻痺させられて、この国自体が駄目になってしまうのではないかと心配したが、とうとうそうなってしまったということなのか? そうであれば、それは安倍晋三の国民を「愚弄」した政治戦略の勝利とその結果としての国民道徳の劣化を肯定せざるを得ないことになってしまうのだが・・・。「愚弄」とは、国民はどうせこの程度のもの、こうしておけば自分に靡く、そうした安倍政治のことである。

 その端的な例の一つは、これまでも繰り返し指摘してきた日銀(黒田)の株買いである。ただそのためだけに日銀は年に6兆円(国家予算の6%)もの札を刷り株を買う。それが既に27兆円にもなった。買う一方だから株価を上げ、下げを止める方向にだけ働く。株主は儲かり、下がっても日銀が買い支えてくれるから損は少なくて済む。株式市場証券会社には莫大な手数料が入り続ける。安倍以外にこんなことを出来る人間はいない。世界の中央銀行でこれほど見え見えで一部の者(株主だけ。一般には富裕層だ)の利益に偏した政策をとる国はない。これを黒田は、株価を維持することで国民の景気心理の冷え込みを防ぐためと平然と国会で答弁し続けている。野党も何故か追求しようとしない。株とは無縁な国民のほとんども、政府から独立した国家機関日銀のする仕事ということに惑わされて、真っ当な経済政策と信じ込んでしまっている。これを政府がやれば誰もが直ぐに気づく。国家予算から6兆円を株買いに充てる? 誰も許さない。国債を6兆円発行してそれをそっくり株買いに充てる? 国債の発行は、銀行などから国民の預貯金を借りることだ。経済政策の名のもとに、国民の預貯金を借り上げてそれをそっくり株主だけに配るに等しい。これも誰も許さない。さすがに安倍というべきか。日銀にやらせる。実に巧妙な国民買収策を考え出したものだ。


 ただ、これには本来もう少し説明がなければならない。ただ札を刷ってばら撒くこのやり方を「ヘリコプターマネー」という(ヘリコプターで札を空からばらまくという意味)。消費の活性化、経済を良くするためのばら撒きなら、6兆円を国民みんなにばらまけばいいではないか? 当然の疑問だが、善良な国民はそんなことは恥ずかしくて口にはしない。それに乗じて、安倍も黒田も「6兆円を国民全部に配っても一人当たりは微々たるものになり経済効果を期待できない。それで株主にだけお金を配ることにしているのです」という説明を、これまでせずに済んできている。株式市場だけへの札のバラマキ、これによって、何があろうが安倍でよい、安倍に続けてほしい、強固な安倍支持の一部国民集団をつくることに安倍は成功した。

 もう一つある。国債を銀行等保有機関からどんどん買って市場に金を流す、経済活性化が名目の日銀の異次元金融緩和策。アベノミクスとやらの柱である。しかし、既発国債の半分にも達しようとという国債買取の実態をみると、国債代金は日銀の当座預金(銀行が、銀行の銀行=日銀に国債売却代金をプールしておく口座)にたまり続けて市場の融資には回らず、経済は決して良くなってはいない。また、円安で(市場に回る国債代金=円が増えればドルなど外貨との相関関係で円の価値が下がる=円安になる)自動車など輸出産業が潤う、その利益がいずれ他の業界にも滴り落ちて経済全体が良くなるとも言ったが、それも嘘。そうはなっていない。業界の一部を潤しているだけ。富の所在は偏り、富める者はさらに富み、貧しい者はどんどん追い詰められていく。格差は拡大する一方だ。

 その結末がつい先日の朝のNHKニュースにあった。「7年前より国民の収入は平均して年約50万円増えた」しかし「増えたのは国民の20%で、80%の人はむしろ減っている」と。国民全体の平均だから、20%の人たちの増え方は50万円どころではない。富裕層では驚くほど高収入の者が登場しているのに違いない。簡単な話、日経平均株を1億円持っていて株価が1割(今なら2000円)上がれば、何もせずに1000万円が転がり込んでくる勘定になる。これが、アベノミクスがもたらした国民経済の帰結なのだ。

 このようにして、安倍の正体がすっかり明らかになっていながら、一方で、この安倍政治の経済的恩恵に浴する少なからぬ人達が着実に一定層形作られてきている。そして、その人たちが、安倍の人物、人格おかまいなしに、「安倍に続けてほしい」と願うようになっているのである。支持の理由が「他より良さそう」? 嘘に隠蔽、文書改竄、道徳倫理感は皆無、責任破壊、部下の非人間的扱い、どこから見ても良いところなどない最低最悪の安倍と、どんな政治をするかもまだ分からぬ(普通考えて安倍より悪くなろうはずのない)他の政治家とを比較して、平気で、安倍の方が「他よりよさそう」と言う、その理由の根本にあるものは、このこと以外私には考えようがない。
 安倍は知っている。或いは学習した。国民の広い支持など必要ない。今の小選挙区制のもと、一部の強固な支持層を養っておけば、それで自民党は選挙に勝ち、誰も口出しできず、長期政権をどこまでも維持することができる。

 確かに、誰しも金には弱い。私も例外ではない。そして、自ら手を下すまではしないにしても、人がやる政治の結果として、自分の今がいいなら、他人はどうあれ国の将来がどうあれ、その状態が続いてほしいと思うのだろう。格差の拡大も、地方経済の疲弊も、日々の暮らしに困る人たちが増えることも、それは自己責任で片づけたくもなるのだろう。残念ながら、今この時においてなお安倍内閣支持を公言できる人はそういう人たちなのだと考えざるを得ない。20%の収入が増えた人たちにはその恩恵にあずかる家族がいるし、ここに、それ以外のことはどうであれ、政治思想的に(憲法改正天皇制の復活、軍備増強)何が何でも安倍でなければならない日本会議神社庁などの人たちも加わる。それらを合わせて、50%に近い安倍内閣支持率が叩き出される。

 情けなく悲しくもある。みんな本当にこれでいいと思っているのかな? 国民みんなの暮らし、国の将来、政治の在り様など真剣に考える方が馬鹿なのか。安倍に敗北宣言してもう諦めるべきなのか、それとも、そうした国民も、ただ一時安倍の策略に絡めとられて我を失っているに過ぎず、早晩必ずその間違いに気づく、なおも信ずべき人たちなのか。後者であってほしいのだが・・・。