負けられない 新潟県知事選

新潟県知事選が迫っています。致し方なしとはいえ、残念な突然の米山前知事の失脚。私は、原発に関して豊かな見識のもと自ら綿密な検討を加えて確かな結論にたどり着けた彼のような保守系政治家をかつて知りませんでした。今では「官僚に騙された」と公言してはばからず、再稼働反対運動に身をささげる 小泉純一郎氏がいますが、現役にはなかなか見当たりません。まず真剣に考えようとしない。或いは考えてもよく分からないから推進側の説明に盲従する。福島の事故など二度と起こらないと思っているし、あれくらいの事故が数十年に1回程度なら経済振興の方が大事(原子力産業、海外輸出)という程度の頭の連中です。そうでなければ再稼働容認などあり得ないから。あるはずのない水素大爆発が原子炉建屋の屋根を吹き飛ばしてくれた幸運が周辺住民の多くの命を救ってくれたこと、この奇跡を無駄にしてはならない、そのことが分かっていないのです(このことは後で別稿に書くことにしましょう)。
 米山知事のもと彼が知事職にある限り、柏崎原発の再稼働はない、東電もそのうちに息切れするだろうと期待していました。何ということでしょう。政治の世界「一寸先は闇」は不埒な権力者に向けられた言葉かと思っていたのですが、政治家として良き資質の持ち主にも襲い掛かるもののようです。
 しかし、気落ちしてばかりもいられません。原発再稼働反対派候補の擁立を封じる意図だったのか、当初、新潟市長を中心に市民グループの仮面をかぶり、米山知事路線を継承すらから心配ないと、本心は再稼働容認の官僚出身候補を推す動きがありました。反対候補が出てくれたおかげで、化けの皮がはがれそのグループの影も薄くなりましたが、実に汚いやりかたで腹がたったものでした。検証を引き継ぐといっても、検証委員会が断定的な結論を出すはずはなく、最後は知事の判断となります。国会での役人たちの哀れな姿を見ていて明らかなように、このような経歴の人が国の方針に逆らえるわけがありません。「私自身の判断で、国の指示に従ったのではありません!」。嘘をつけ!そんなことは既に全国民周知の事実となっています。
 唯一のこの選挙の気がかりは、再稼働反対派の候補がハッキリと革新系の候補だということです。原発についての問題意識は強く、国政レベルの選挙でも新潟県民の政治意識は全国に誇っていいほどに高いのですが、地方議会や首長レベルの選挙となると、その傾向にブレーキがかかってしまう、それもまたこれまで随分と経験してきたことだからです。ハッキリ革新系の人を知事にすることに躊躇したりすることがないのかどうか。
 しかし、もしあるなら、今回はそんな考えは捨ててもらわなければなりません。 ここで問われるのは、柏崎原発の再稼働を本当に認めていいのかどうか、新潟県民のその思いの強さだと私は考えています。負ければ柏崎原発再稼働への道が間違いなく開かれてしまうのですから。それに対する県民の答えとなる選挙なのです。
 県民投票の約束もいいではありませんか。判断は最終的に県民に委ねるというのです。検証結果が両論併記でもこの人は原発再稼働を認めないでしょうが、さらにその判断の是非を県民に問う、県民の意思に合致しているかどうかも確かめる、というのです。これ以上に民主的な方法はありません。また、知事が再稼働反対なのですから、自民党住民投票条例の制定に反対することはありません。推進側が住民投票で知事の判断を覆すしかなくなるからです。県民投票は実現し、柏崎原発再稼働反対は知事のみならず県民の意思としても確定されることになります。遠からず東電も永久にギブアップです。他方、相手が県民投票の実施を約束することはありません。県民に再稼働に反対されたら大変だからです。そこで、口先だけ県民を騙せばいいだけの検証路線継承公約の化けの皮がキレイに剥がれることになります。