新潟県知事選 原発再稼働阻止へ希望をつないだ価値ある選挙戦

 新潟県知事選は野党統一候補の池田千賀子氏が4万票あまりの票差で敗れた。新潟では柏崎原発再稼働問題を抱えていることに加えて、安倍政権の腐敗堕落という国政レベルの大問題もあることから、私は、この選挙で県民は間違いなく正しい判断を下す、この選挙は勝てるはずと先にブログにも投稿していた。残念な結果である。
 しかし、今日の朝刊にこんな記事を見つけた。自公をバックに当選した花角は、選挙期間中「原発再稼働問題では、検証結果を見て、自分で判断をし、その上で出直し知事選等でその判断について県民に信を問う」と訴えていて、当選後の記者会見でも「その意思は変わらない」と述べたというのである。私はこのことを知らなかった。
 それを知らずにいた私は、前回原発再稼働反対を表明した米山候補(前知事)に投票した人の3割、そして投票者の6割を占めたという原発再稼働反対の人の3割が花角に投票した(花角の得票数55万票のうちの18万票になる)という出口調査の結果を知って愕然とし、その人たちは一体何を考えているのか、民主主義、国民主権の大切さが分からないのか、原発再稼働反対もその程度の認識でしかなかったのかと、選挙結果確定の直後には絶望感すら覚えていた。
 しかし、花角が原発再稼働に関し前記の言葉にまで踏み込んだ演説、選挙運動をしていたのであれば、この選挙結果はそう単純な話にはならない。もともとの自公支持者には耳障りの良い言葉であったに違いなく、花角のもとでも原発再稼働は止められるのではないかと考える者が出てきたとしても無理からぬものがある。少なくとも原発再稼働に関しての県民意識が大きく後退したと考えることはなさそうだ。
 花角の選挙演説が、安倍政権で今はやりの「嘘」「ごまかし」、選挙の「争点隠し」なのか、それとも、これから政治に携わろうとする者の何がしかの政治信条に基づくものなのかは、早晩明らかになることではあるが、少なくとも、原発再稼働反対の強い県民意識が、そう言わざるを得ないところに花角を追い込んだことは間違いないし、それを花角は受け入れたのであり、その結果花角に流れた県民票は今後彼の行動に重くのしかかることもまた間違いのないところである。県民に直接語り掛けた言葉をそう簡単に反故にすることはできまい。彼には大きな足枷になった。これがまた、我々のこれからの原発再稼働反対運動の大きな拠り所ともなる。
 こうしてみると、もちろん勝つに越したことはなかったが、この負け選挙もそう捨てたものではないとも思えてくる。それどころか、花角に前記約束をさせたこの知事選こそが、柏崎原発再稼働の行方を左右した最も重要な闘いであったと後々称賛されることもあり得るのではないか、とも。
 その意味で、池田氏の勇気ある決起には心から感謝しなければならないし、立憲民主党を中心にした野党各党、市民集団の頑張りにも心からの感謝と敬意を表さなければならない。我々は、原発再稼働阻止の闘いを明日につないだこの尊い選挙戦を無駄にしてはならない。
 齢70年、引退を決め込み今回の選挙ではこれといった行動はとらなかった。この反省と悔しさをバネに、これからは花角知事の言動を注視し、一朝ことあらば、その時こそは最後のご奉公をとの思いを強くしている。