慣れてはいけない 許してはいけない 嘘と隠蔽

 今朝のTV番組で、あるコメンテーターが「どんな展開にも驚かなくなっている自分にハッとした」という趣旨の発言をした。本当にそうだ。政治のトップや官僚たちによって1年以上にわたって繰り広げられる「嘘と隠蔽てんこ盛りショー」を見せつけられ続けていると、政治だからそんなものか、政治の世界ではこれが当たり前か、国民があがいてどうこうなることではないと、こちらの感覚が麻痺させられてしまいそうである。
「正直でありなさい」「嘘をついてはいけない」、子どもの頃に嫌と言うほど親や先生たちに教えられたことだ。それを破るようなのは「人間のクズ」だ、と。我が国は、人間のクズどもが国の舵取りをし国民を支配する国なのか。そして、それを正すことのできない国なのか。確かに、最近は怒りを通り越して、情けなさ、無力感が先に立つようだ。
 今日も嫌なニュースを耳にした。愛媛県知事も怒りを露わにしているが、愛媛県の文書に登場する加計理事長と安倍首相との面会は「作り話」だったと、加計学園の担当者が述べたというのだ。中村知事の言う通り、「一つの嘘は多くの人を巻き込んでしまう」。それがまた動かしがたい真実の重みの故でもあるのだが、嘘はとどまるところを見つけられずに、どこまでも広がっていく。それを地で行く展開だ。
 いい加減にしろ!その弁明が本当なら、安倍首相の首が飛ぶ重大事、即座に主張されていなければおかしい。県の職員が安倍首相を陥れるために虚偽の事実を書いた? 誰がどう考えても無理だ。そこで関係者で鳩首協議、すり合わせた結果、これでいけるか。「作り話をしてしまいました」? 今頃言うこと自体が嘘であることの証明だ。誰が信じるか!それが、ある事実とその事実が述べられる時期との関係の常識的な推理、推論(裁判での「経験則」)というものだ。同じ嘘でももっとうまい嘘を考えろ!
 安倍首相は、加計理事長とは友人であるだけにことさら気を付けていて、「彼と獣医学部のことは一切話していない」と国会で答弁している。それなのに、加計の担当者の方は「加計理事長が安倍首相に話をして、安倍首相も「いいね」と言ってくれた」というつくり話まででっち上げ、しかもそれを、広範に知られてしまうことも気にせずに、市や県の担当者に理事長と安倍首相との親密な関係をアピールしていたという嘘なのだから、その内容にも驚きだ。この言い訳には安倍首相もビックリしていることだろう。
 もう一つの驚きは次のことだ。安倍首相は加計理事長のことを「私に迷惑をかけないよう、加計理事長が私に頼み事をすることは決してない」とも述べている。安倍首相の答弁が正しいなら、加計理事長は、この件では、直接の働きかけを慎むことはもちろん、職員に対しても、安倍首相との友人関係の言及にはよくよく注意するよう指示していなければおかしいことになるが、今回の加計学園側からの弁明は、そんなことではなかったばかりか、学園側は、むしろその正反対に、理事長と安倍首相との面会の作り話をでっち上げ市や県を騙してでも計画を前に進めたい、何でもありの推進活動をしていたことになる、そして、そのことを学園側が自ら認めることになっていることである。関係を伏せるどころか積極活用である。あくまで「作り話」というのが本当の話ならである。無理というものだ。この話は嘘としても出来が悪すぎる。面会は真実であり、担当者はそれを嬉々として伝えていたのに違いない。
 文書の記載内容を否定するために考え出した嘘なのであろうが、それは手段を択ばぬ推進活動を推認させこそすれ、学園から安倍首相への働きかけなど一切していないという学園側の言い分にとっても明らかにマイナスの主張となる。そのことに理事長は気づいているのだろうか。あまりの嘘の積み重ねで当の本人たちが収拾がつかなくなっているとしか思えない。安倍首相との度重なるゴルフ、会食の席で獣医学部のことを口にしていない? 安倍首相に会いに出かけたことはない? もともと誰も信じていないが、語るに落ちるとはこのことだ。
 一つの嘘は次の嘘を必要とし、上司の嘘は部下に嘘を求める。嘘も質がどんどん悪くなっていく。私の場合、法廷で証人や本人の供述の嘘を暴くことが仕事の半分のようなものだったが、嘘をつき通すということは、ことほど左様に難しいものなのである。
 それでも、安倍首相は「私は加計理事長と会ってはおりません」、加計理事長は「そんな作り話をするとはけしからん!職員への監督指示が行き届かなかった」で逃げるのだろう。そして、これが通用してしまうのが今の安倍一強国会である。自民党の中にも、この事態を前にして国の未来を憂いている議員がわずかにはいるようだが、ほとんどが日本がどうなろうが構わない太鼓持ちばかりだ。
 でも、諦めてはいけないのです。良識ある野党議員は頑張っているし、いつかこの腐りきった政治を正せるチャンスが来ます。慣らされてしまうことなく、今の怒りを忘れずに、その機会を待ちましょう。日大アメフト部の宮川君の覚悟と誠実な説明、心からの謝罪に、日本中が正義の姿、真実の大切さ、人間の誠実さ、人の尊厳を目の前に見て感動しました。ここに人間あり。これこそ人間。私たちにこの感性がある限り、日本はまだ大丈夫です。みんなで本当に「美しい」日本を取り戻しましょう。